趣味

加藤正夫が小川誠子六段に送ったエール


2013.12.21

対局中の小川誠子六段を見守る加藤正夫名誉王座(撮影年不明) 写真提供:日本棋院

小川誠子(おがわ・ともこ)六段は、花形女流棋士として活躍し、NHK杯の聞き手も10年間の長きにわたって務め上げる(途中1年間休養)など、碁界の最前線を走り続けてきた。

 

五段昇段やタイトル獲得の手前での足踏みがあったとはいえ、極めて順風満帆な棋士人生を送ってきたのではないかと想像してしまうのだが、本人は「全くそんなことはないのです」と振り返る。

 

*  *  *

 

本当にしょっちゅう悩んでいましたよ。「このまま碁を続けていていいのか」「本当に向いているのか」とか…。

 

やっぱり一番つらいのは負けることで、あまりに内容がひどいと、やはり落ち込んでしまいます。そのときに「このまま棋士をやっていていいのかなぁ…」と考え込むわけです。

 

亡くなられた兄弟子の加藤正夫先生に「ひどい碁ばかりで、もう引退しなくてはいけないかもしれない」と愚痴をこぼしたことがあるのですが、返ってきた言葉が実に明快でした。

 

「弱いから負けるんだから、悩む必要は何もない。それと“引退”っていう言葉を使うことができるのは呉清源先生くらいで、僕でも使えないよ。だから次によい碁を打てばいい、よい碁を打とうって気持ちがあればいいんだよ」

 

で、その加藤先生はというと、つらい負けのあとでも愚痴ひとつ言わずに、じっと耐えながら自分の中で敗因を追求しているのです。そうした姿を拝見して「私などが愚痴を言ってはいけないな」と反省しました。

 

その後も加藤先生には、インターネットで碁を打っていただいたり、私の打った碁を見ていただいたり、晩年まで本当にお世話になりました。亡くなられる半月ほど前にご一緒したときにも「またネットで碁を打ってあげるからね」と言ってくださって、またご自分のことはめったにおっしゃらないのに「今の日本棋院理事長職の任期が終わったら、また手合を頑張ろうと思っている。あと棋聖を取れたらグランドスラムになるからね。こうして頑張っていられるのも、本当にいい家族に恵まれたからだ」と話しておられました。早くに亡くなられたことが本当に残念でなりません。

 

■『NHK囲碁講座』2013年12月号より

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