趣味

謝依旻六段に訪れた“2年目のジンクス”


2013.11.29

趙治勲十段対山下敬吾棋聖(当時)による第44期十段戦で記録係を務める(2006年) 写真提供:日本棋院

現在の日本女流碁界の第一人者、謝依旻(しぇい・いみん)、24歳。謝は、わずか1年強という短期間でプロ入りを決める。

 

しかも女性限定の特別枠ではなく、男性に伍した一般枠で勝ち上がったのだから、その価値は絶大だ。周囲が「女流の大型新人誕生!」と色めき立ったのは当然である。

 

デビュー以降も期待どおりに白星を積み上げ、3年目の2006年には女流最強戦で優勝。14歳4か月という、史上最年少での女流タイトル獲得記録を打ち立てた。

 

その後も女流本因坊、女流名人、女流棋聖と立て続けに獲得して女流の頂点へ。もはやその実力は完全に女流の枠を飛び越え、一般棋戦での活躍が切望されるまでの存在となっている。プロの世界に飛び込んで間もなく10年、極めて順風満帆な歩みと思えるのだが…。

 

『NHKテレビテキスト 囲碁講座』の人気シリーズ「敗れざる棋士たち」。今回は謝に2年目のジンクスを聞いた。

 

*  *  *

 

うーん、順調と言えるのかどうか…。確かに女流のタイトルをたくさん取ることができたので順調ではあるのでしょうけど、「もっとやれたのではないか」という気持ちもあることは事実です。

 

とはいえ、プロとして対局できる環境にいるということは何よりうれしく、幸せなことですからね。順調ではあると思います。

 

ただしこの10年間、何もつまずきがなかったということではありません。プロ2年目の後半から3年目の前半にかけて、まったく勝てなくなった時期があったのです。

 

趙治勲の“指導”で不振脱出

 

プロ2年目の2005年後半から06年の初めにかけて、半年くらいまったく勝てなくなってしまいました(2勝12敗)。

 

今になって考えれば、単純に実力が足りないだけだったことが分かるのですが、当時の自分としてはかなり悩み「まったく勝てる気がしない」状態に陥っていたのです。

 

立ち直るきっかけとなったのは、この年の春に十段戦の記録係を務めたことでした。

 

趙治勲先生に山下敬吾先生が挑戦したシリーズで、私は向井千瑛ちゃん(現五段)と二人で記録係をしていたのですが、局後の検討を終えたところで趙先生が「君たち、僕と碁を打とうか?」と声をかけてくださったのです。

 

先生はタイトル戦の激闘を終えたばかりですから「本当にいいのかな?」と思ったのですが、せっかくのチャンスですから、お願いすることになりました。というわけで私と千瑛ちゃんは、趙先生に二面打ちで教えていただくという、奇跡のような幸運に恵まれたのでした。

 

とにかくうれしくて、楽しかったことを覚えています。かなり夜遅くまで、四局ほど打っていただいたのですが、私も千瑛ちゃんも無我夢中でした。

 

そして実は、勝たしていただいたりもしたんですね。先生はタイトル戦のあとでの二面打ちですから、真剣勝負の勝利とは言えないのですが、それでも「趙先生を相手に互先で好勝負できた」という事実が、何物にも代えがたいほど大きな自信となったのです。

 

この経験があってから、碁盤に対し前向きな気持ちで向かえるようになりました。「こんなに碁って楽しかったんだ」というか…。その後の中野杯と若鯉戦(ともに若手限定棋戦=当時はまだ非公式戦だった)で準優勝と優勝を果たすことができたのは、すべて趙先生のおかげなのです。

 

翌年の十段戦にまた記録係で行ったときも、まったく同じように趙先生に教えていただいたことも、付け加えておかなければいけませんね。

 

■『NHK囲碁講座』2013年11月号より

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