趣味

山城宏九段の“囲碁普及”の取り組み


2013.10.23

山城九段 撮影:小松士郎

山城宏(やましろ・ひろし)九段は昨年の6月から、日本棋院の副理事長に就任した。

 

一流棋士としてリーグ戦でも活躍中の山城がなぜ副理事長職を引き受けたのか、そして囲碁の普及団体として、どのように囲碁をアピールしようとしているのか。また、副理事長の仕事は激務である。その中で棋士としての本分もおろそかにすることはできないわけだが、その両立は可能なのだろうか。現在の「棋士・山城宏」がどこを目指しているのかも聞いた。

 

*  *  *

 

大竹英雄理事長のあと昨年、財界から和田紀夫理事長をお迎えし、頑張っていただいているわけですが、自分も棋士の一人としてお手伝いしないといけない―この気持ちが、僕が副理事長職を拝命した一番の理由でしょうか。

 

僕の師匠である島村俊廣先生は、65歳のときに天元のタイトルを獲得されて、その時に副理事長職をしておられたんです。僕ら10人近くの内弟子を育て、名古屋駅前のご自分の囲碁クラブでアマチュアの指導をなさっていたという、何でもされた超人的な先生だったんです。

 

その背中を見ていましたからね。僕の場合は真似事(まねごと)みたいなものですけど、「まあ、自分なりにやれることをしよう」と考えました。

 

和田理事長からいつも言われているのは、まず囲碁人口が減少しているということで「とにかく若い人に囲碁をやってほしいんだ」ということです。それには教育の舞台に囲碁を入れていくのが一番いいので、単位を取れる正課として、東大など東京六大学をはじめとして、現在10大学ほどが囲碁を授業として取り入れてくださっています。そして、大学だけではなく、小中学校、高校への働きかけも行っています。

 

具体的な働きかけの内容としては、大学の場合は「囲碁をやると思考力とか創造力といったものが向上する」といった部分を最大のアピールポイントとして、そして高校以下についてはそれにプラスして「人とのコミュニケーション能力が上がりますよ」といったことも強調しています。そうした点を各学校に直接行ってお話ししたり、行政や教育委員会にお願いしたりという活動ですね。

 

で、大学に関しては、本当に手応えを感じています。あと小学校とか中学校に関しては、東京都内の方ではかなり広がりつつあるといった状況です。とはいえ全国的にはまだまだという部分も多く、課題も山積みです。特別な秘策みたいなものはなかなか見つからないので、行政と地元・地域の方々にご協力をいただき、日本棋院とタイアップして進めていくことが不可欠であることは間違いありません。

 

これまでの囲碁界は正直なところ、風が吹くのを待っているというか、自分から動くことをしなかった部分がありました。その反省がありますから、これからは日本棋院から積極的に動いていかなければ何も始まらないという考えでいます。あれこれ心配するよりも、まずは動いてみようということです。

 

副理事長として、一人の棋士として

 

先ほど島村先生の話をしましたけど、棋士の本分である棋道の研鑽(けんさん)と後進の育成、囲碁の普及を、すべて同時に高いレベルで行った人を間近で見ているわけです。島村先生にできたのだから僕もと言うつもりはありませんが、それでも「自分のできる範囲で」という気持ちを持って、今はやっています。

 

また、タイトル戦に出たいという思いはもちろんあります。諦めてはいませんよ。でもそのためには、もうちょっと強くならないと…。強くなるというか、そういう向上心を持ち続けることが大事です。そして気持ちだけじゃなくて、実際に行動しないとね。

 

今の副理事長職が手合に響いているのかいないのか、それは今の段階では分かりません。碁盤の前に座る時間が減っていることは間違いありませんが…。ただ、今までやったことがないことをしているので、これまで使ったことがない頭を使っていることもまた確か―。その点で手合で碁盤の前に座ったときに、実に新鮮な気持ちになることがあります。それで何かが起こるかどうか、ということではないでしょうか。

 

■『NHK囲碁講座』2013年10月号より

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