趣味

長谷川優貴女流二段を褒めて伸ばした師匠の戦略


2013.10.29

イラスト:佐々木一澄

長谷川優貴(はせがわ・ゆうき)女流二段が将棋を始めてから8年。師匠の野田敬三六段は、何かを強制することもなく、ひたすら優しく長谷川女流二段を導いてくれたという。弟子を褒めて伸ばしてきた野田六段の指導法とは——?

 

*    *    *

 

私が将棋を覚えたのは小学4年生。祖母の紹介で野田将棋教室に通うようになりました。師匠はまだルールもおぼつかないような私と弟にほとんど付きっきりで指導してくださりました。最初の認定は10級。しかし師匠と指すときはいつも平手。もちろん手加減して指してくださるわけですが、幼かった私はプロの先生とハンデ無しでいい勝負が出来る(と思っていた)ことがうれしくてあっという間に将棋にのめりこんでいきました。

 

毎週、同じ級くらいの子と詰将棋早解き対決をしてその後は師匠とずっと指してもらえる、本当に恵まれた環境だったと思います。師匠には怒られたことはおろか、「この手が悪い」などと言われた記憶もありません。「この手はいい手やね」「参ったなあ」など、本当に褒める褒める(笑)。最後にはきっちり負かされていつもトイレに逃げて泣いていたのですが、次はもしかしたら…、という気持ちになったものです。

 

そんな環境で将棋をしていた私は、2年程で比較的順調にアマ二段になりました。しかしここから停滞してしまい三段になるのは1年半も後のことでした。

 

昔から師匠は「〜をしなさい」とは絶対に言いませんでした。唯一言われたのが「詰将棋」でしたが、それも「したほうがいいよ」という優しい言い方。私が勉強嫌いで実戦しかしたがらなかったせいもあるのでしょう。

 

そんな私も昇段出来なくて焦りを感じ、師匠に相談してみました。「先生、勝てへん…」と。少し考えて師匠は「定跡覚えてみる?」とおっしゃりました。その頃の私は定跡の本は読んだこともなく、棋譜並べもほとんどしない。「本は難しくて読めない」と言おうとした私に師匠は「僕と実戦をたくさん指そう。その途中で定跡教えていくから。優貴ちゃんは本読むより実践して身体で覚えていくほうがいいよ」と言ってくださりました。

 

その時から師匠との対局は毎回指し終わってから「ここはこう指したから悪くなった、この局面で考えてみなさい」という形になりました。1日に3局指して次週また同じ形を復習。それまでとは異なる指導で、触れたこともなかった序盤の細かさを考えるようになりました。そして、師匠に相談してから3か月程で念願の昇段。現金なものですが、この頃から少しずつ定跡の本も読むようになりました。

 

研修会に入会したいと言った日も、女流棋士になった日も、ずっと負けている日も、いつも師匠は温かく見守ってくださりました。大好きな師匠の期待に応えたい。恩返しとなるような活躍を目指して毎日を頑張っていきたいと思います。

 

■  『NHK将棋講座』2013年10月号より

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