趣味

団体戦に挑む棋士の気迫届いた第2回将棋電王戦


2013.10.21

写真提供:株式会社ドワンゴ

現役プロ棋士とコンピュータによる5対5の団体戦となった第2回電王戦。結果はプロから見て1勝3敗1分——。将棋というゲームの枠を超え、「人間vsコンピュータ」という図式でも、この棋戦は大きく注目を浴びた。電王戦を主催する株式会社ドワンゴで、ニコニコ生放送の将棋担当ディレクターを務める武田同史氏が「観る将」(観戦専門の将棋ファン)を代表して観戦記を綴る。

 

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歴史的瞬間

 

投了の発声に備えてか、コップの水を一口含む。記録席の安食総子女流初段から「これより1分将棋でお願いいたします」の声がかかった。

 

「ボンクラーズ(コンピュータ将棋プログラム)」の評価関数は「-2017」。先手に逆転の余地がないことを告げている。視線がどことなく虚(うつ)ろだ。「50秒、1、2、3…」頭を下げた。2013年4月20日午後6時14分、現役プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトが5対5の団体戦形式で戦う第2回将棋電王戦、大将の三浦弘行八段(当時)が敗れ、プロ棋士チームの敗北が決定した瞬間だった。

 

「団体戦」の意味をかみしめて

 

第2回電王戦の対局でもっとも印象に残ったのは第4局、塚田泰明九段vsPuellaα戦だ。終盤、持将棋を目指す指さしながらの点数確認は、どこかユーモラスなのだけれど真剣な表情を見るととても笑う気にはなれない。

 

そして、引き分けが決まった後の記者会見でのことだ。第1局から3局まで、会見の質問項目に「次戦の棋士へのメッセージ」を入れていた。団体戦である以上、個人としての勝敗だけでなくチームとしての勝敗に重い意味がある。少なくとも世間にはそう映る。ところがなかなかそれらしい発言を引き出せない。「○○先生は自分より強いので申し上げることはありません」でそっけなく終わってしまう。これが3回続いて諦めた。4回目には台本から外したのだが、あにはからんや、メディア質問で同様の問いかけがあり、塚田九段は「三浦八段が勝てば引き分けだから、がんばってね」と初めて団体戦らしい回答をしてくださったのだ。それぞれが一国一城の主(あるじ)であり、他の棋士の勝敗には基本関心がない棋士としては異例の発言だろうと思う。塚田スペシャルで一世を風靡(ふうび)したスター棋士が、地べたを這うような泥臭さで持将棋をつかみ取る。これこそ団体戦だ。電王戦で将棋番組を初めてごらんになったみなさんにもその気迫が届いたはずだ。

 

一方、大将の三浦八段。引き分けにはさしたる意味がなくなった。筆者は三浦八段推しだが「千日手を選択できる機会があれば迷わず選ぶ」の条件付きだ。「これは危ない」と嘆息した。そして冒頭の場面となる。

 

第2回将棋電王戦。結果はプロ棋士1勝、コンピュータ3勝、引き分け1。コンピュータチームが勝利を収めた。ニコニコ生放送の来場数は5局で200万超。昨年の雪辱を果たした。本稿では触れなかったが、阿部四段、佐藤四段、船江五段、そして開発者のみなさん、それぞれに背負うものやドラマがあった。人類vsコンピュータというわかりやすい対立の図式とあいまって、「観る将」のみなさんにも、これから「観る将」になろうというみなさんにも大いに楽しんでいただけたと思う。

 

■『NHK将棋講座』2013年10月号より

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