健康

新しいB型肝炎の治療


2013.09.12

ウイルス性肝炎には主にB型、C型肝炎があり、「肝硬変」や「肝がん」へ進行する危険性がある。B型肝炎について、武蔵野赤十字病院 副院長の泉 並木(いずみ・なみき)さんに詳しく聞いた。

 

*    *    *

 

◆ウイルス性肝炎 主にB型・C型があり、肝がんの原因の多くを占める

 

肝臓は、「有害物質の解毒、代謝」「たんぱく質とブドウ糖の合成、貯蔵」「胆汁の合成、分泌」といった働きをする臓器です。日本人に多い肝臓の病気は「ウイルス性肝炎」で、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスが主な原因となります。これらに感染した人の一部に「慢性肝炎」が起こり、「肝硬変」や「肝がん」へ進行することがあります。

 

◆ウイルス性肝炎のリスクは高い

 

日本における肝がんの死亡者数とその原因を調べると、B型とC型のウイルス性肝炎が大部分を占めています。

 

B型肝炎の治療は1970年代から始まっており、有効に行われてきたと考えられていました。ところが、B型肝炎を原因とする肝がんの死亡者数は一向に減っていません。そのため、近年、B型肝炎の治療について見直しが必要と考えられるようになりました。

 

◆B型肝炎 無症候キャリアの場合も肝がんのリスクがある

 

B型肝炎は、成人で感染する場合と、3歳以下で感染する場合があります。成人になって感染した場合、ごくまれに「劇症肝炎」という重篤な状態に至りますが、大部分は「急性肝炎」を発症したのち、治癒すると考えられていました。しかし、特殊なB型肝炎ウイルスに感染した場合、約10%の患者さんは、急性肝炎を経たあとも、ウイルスを保有し続ける「無症候性キャリア」の状態になることがわかってきました。3歳以下で感染した場合は、約20%の患者さんが慢性肝炎へ進行し、残りの約80%の患者さんは、無症候性キャリアになります。

 

これまで、B型肝炎の治療は急性肝炎や慢性肝炎を起こした人を対象に行われていました。成人で感染した場合も、3歳以下で感染した場合も、無症候性キャリアとなった場合は、症状が現れることなく一生を過ごせると考えられていたためです。しかし近年、無症候性キャリアと判断された人の中にも、肝がんを発症する人がいることがわかってきました。

 

◆ウイルスの再燃による肝がんのリスク

 

無症候性キャリアになるのは、ウイルスが免疫の働きで抑え込まれ、活動性を失うためです。免疫が働くと、肝臓に炎症が起こるため、肝細胞が壊れているかどうかを示す「ALT」の値は上がり、「ウイルス量(HBV‐DNA)」の値は下がっていきます。このような、免疫の働きによってB型肝炎ウイルスが抑え込まれる現象を、「セロコンバージョン」といいます。

 

従来、セロコンバージョンが起これば、再びウイルス量が増えることはないと考えられていましたが、実際には、再びウイルス量が増える場合があることがわかってきました。これを「再燃」といい、その中から慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進行することがあるのです。

 

■『NHKきょうの健康』2013年9月号より

このエントリーをはてなブックマークに追加

  • テキスト定期購読

  • テキストビュー300×56

000064072502019_01_136

NHK出版 学びのきほん からだとこころの健康学

2019年09月25日発売

定価 737円 (本体670円)

000067941852019_01_136

別冊NHKきょうの健康 シニアの骨粗しょう症・圧迫骨折を防ぐ!

2019年07月22日発売

定価 1210円 (本体1100円)

000067941842019_01_136

別冊NHKきょうの健康 シニアの逆流性食道炎

2019年06月21日発売

定価 1210円 (本体1100円)