健康

乳がん検診の今——リスクに応じた早期発見


2014.11.25

イラスト:湯川信子

日本人女性のがんの中で最も多く、この30年間に大幅に増加している乳がん。昭和大学 教授の中村清吾(なかむら・せいご)さんに最新の乳がん検診事情について、詳しく話を聞きました。

*  *  *

乳がんとは

乳がんは、日本人の女性に最も多いがんです。年齢別に見ると、30歳代後半から増え始め、40歳代後半から50歳代にピークを迎えています。しかも、新たに乳がんを発症した患者さん(※1)は1980年と比べると、どの年代も大幅に増加しています。

乳がん増加の背景には、食生活の欧米化と、それに伴って肥満傾向が強まったこと、画像診断等が進歩し、多くの早期がんを発見できるようになったことなどがあると考えられています。早期に適切な治療を行えば、10年生存率は95%以上と、乳がんの治療成績は上がっています。

■乳がんのできる場所と治療法
乳房には、母乳を作る小葉(しょうよう)というぶどうの房のような組織と、小葉で作られた母乳を乳頭まで運ぶ乳管という細い管があります。この小葉や乳管にできる悪性の腫瘍が乳がんです。

乳がんの主な治療には、手術、放射線、薬があり、治療は、単独で、あるいは複数の治療法を組み合わせて行われます。どの治療法を組み合わせるか、また、それらをどの順番で行うかは、がんのタイプや進行度によって異なります。

■しこりに気付いたら
乳がんは、しこりに自分で気付くことが多いがんです。ただし、乳腺症(※2)や、月経前にだけしこりを感じるような場合は、生理的な変化によるもので、一般にあまり心配する必要はありません。

多くの場合、乳がんのしこりは、硬くて石のようにゴツゴツしています。がん細胞が触ってわかる1cmほどの大きさになるには、7〜8年かかるといわれています。しかし、現在は画像診断が進歩し、5mm程度の小さながんでも、画像診断で見つけられるようになっています。

■乳がん検診
乳がんの早期発見には、検診を受けることが重要です。日本における乳がん検診は、対策型検診と任意型検診の2つに大別されます。自治体が行っている乳がん検診は、対策型検診とも呼ばれ、集団全体の死亡率を下げるために公的な負担で行われるものです。40歳以上の女性を対象に2年に1回、医師による視触診とマンモグラフィ(乳房のエックス線検査)による画像診断が行われます。

任意型検診は、希望者が自費で受けるもので、何歳からでも受けられます。視触診、マンモグラフィに加えて、超音波検査(乳腺エコー検査)が行われます。

さらに詳しく調べる場合は、MRI(磁気共鳴画像)検査が行われることもあります。MRI検査では、造影剤によりがんの部分が白く写し出されるため、がんがある場合は、その広がり方を含めて、乳房の様子を立体的に観察できます。

■年代による適した検査方法
マンモグラフィの画像では、乳腺は白く、脂肪は黒く写ります。若い人は乳腺が発達していて脂肪が少ないため、ほとんどの部分が白く写り、白く写る病変を見つけにくくなります。そこで超音波検査を組み合わせると、小さな病変も正確に見つけられます。一方、60歳代ぐらいになると、脂肪に置き換わる乳腺が増えて乳腺密度が低くなるため、マンモグラフィでよく見えるようになります。
若い人の場合は、できれば30歳代後半から超音波検査を受けることが勧められます。また、年代によっては、自治体の乳がん検診に超音波検査を組み合わせるとよいでしょう。

■「石灰化」があるといわれたら
乳腺ではカルシウムを含んだ母乳が作られるため、カルシウムが結晶を作ると石灰化が生じます。一方、がん細胞は活発に増えるため、増殖の過程でがん細胞の壊死(えし)に伴う石灰化が生じることがあります。石灰化がある人の3割ぐらいが乳がんを疑われて精密検査を受けることになりますが、その中から実際にがんが見つかる例はごく僅かです。

■乳がんのリスクが高い人とは
乳がんのおよそ7割は、女性ホルモンのエストロゲンによる刺激でがん細胞が増えるタイプです。「初潮が11歳以下と早い」「閉経が55歳以上と遅い」「初産が30歳以上と遅い、または出産していない」人は、一生涯のうち、月経回数が多く、女性ホルモン値の高い期間が長いため、乳がんのリスクが高いといわれます。ほかに、「高脂肪食」「閉経後の肥満」「アルコール」なども発症に関わっているといわれています。
また、「親族に乳がん、卵巣がんになった人が複数いる(※3)」場合も、乳がんのリスクが高いといわれ、遺伝性乳がんの可能性も疑われます。
これらのリスクのある人は、特に注意して検診・検査を受けるとよいでしょう。

遺伝性乳がんとは

「がんに関わる遺伝子の変異」によって発症したと考えられるのが遺伝性乳がんです。乳がんを発症した人のうち、遺伝子の変異があるのは5〜10%と考えられ、そのうちの多くを占めるのがBRCA1とBRCA2という2つの遺伝子の変異だといわれています。予防・早期発見のために、遺伝子検査を受けてみるのも1つの選択といえます。
遺伝子検査は、血液検査でBRCAの変異の有無を調べるもので、国内では80以上の医療機関で実施されています。日本HBOCコンソーシアムのホームページでは、日本でBRCA遺伝子検査・遺伝カウンセリングを実施している「検査施設一覧」を見ることができます。

※1 国立がん研究センターがん対策情報センター「地域がん登録全国推計値」では2014年の患者数は8万6700人。
※2 女性ホルモンのバランスが崩れて、乳腺組織に変化が生じたもの。
※3 母親、姉妹が発症している場合。

■『NHKきょうの健康』2014年10月号より


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