健康

漢方は西洋医学と何が違う?


2014.11.26

イラスト:クスノキミワ

長引く症状などが、「漢方」で緩和されるケースがあります。漢方の基本について知っておきましょう。富山大学大学院 教授の嶋田 豊(しまだ・ゆたか)さんにお話をうかがいました。

*  *  *

漢方とは

最近、医療機関を受診したときに、漢方薬が処方されるケースが増えてきました。漢方(漢方医学)は、中国から伝わり、日本で独自に発展した伝統医学です。明治時代に西洋医学が主流になるまで、日本の医療を主に担ってきました。広義には鍼灸(しんきゅう)治療なども含まれますが、一般に漢方といえば、漢方薬による薬物治療を指します。

■漢方薬とは
漢方薬とは、漢方で伝統的に用いられてきた漢方処方と、それを構成する生薬(しょうやく)を指します。
◎漢方処方 —— 一定の配合に基づき、複数の生薬を組み合わせた薬のことです。
◎生薬 —— 天然素材を加工・調整した薬物のことで、植物性がほとんどですが、ほかに動物性、鉱物性のものもあります。植物性の生薬には大黄(だいおう)、甘草(かんぞう)、葛根(かっこん)など多くのものがあり、動物性では牡蠣(ぼれい)、鉱物性では石膏(せっこう)などがあげられます。
西洋医学で用いる西洋薬は、主に合成薬物で、その多くが単一成分です。
漢方薬は、生薬を複数組み合わせたもので、多数の成分(※1)から成り立っています(※2)。

例えば、「かぜ(かぜ症候群)」に対する漢方薬としてよく知られている葛根湯は、7つの生薬から構成された漢方処方です。

■西洋医学との違い
西洋医学は、ひと言でいうと、“科学的”で、検査などにより病気を診断したうえで、臨床試験や作用機序(※3)の解明など、根拠(エビデンス)に基づいた治療を基本としています。それに対して、漢方は、ひと言でいうと、“経験的”で、患者さんの状態を証(しょう)という独特の指針を用いて診断し、長い年月にわたる英知や実績などに基づいた治療を基本としています。
現在、日本や欧米などでは、西洋医学が医療の主役を担っています。例えば、がんの場合には内視鏡治療や手術など、また、細菌による感染症の場合には抗菌薬などによる治療というように、西洋医学が優先されています。しかし、西洋医学によって、すべてを解決できるというわけではありません。

■漢方の役割
漢方が用いられる場合として、次の3つが考えられます。
◎西洋医学ではよい治療法が見つからない —— 例えば、「冷え症(冷え性)」「虚弱体質」「疲れがとれない」などの症状の場合、一般の医療機関では特定の病気が診断されず、よい治療法に巡り合えないことも少なくありません。そのようなときに、漢方を用いる医療機関を受診すると、その人に合った漢方薬が処方され、効果が期待できる場合があります。

◎西洋薬で副作用がある —— 例えば、抗がん剤の治療を受けている人が副作用で末梢(まっしょう)神経障害による手足のしびれや痛みに悩まされたり、食欲や体力がなくなったりして、抗がん剤の治療を続けることが困難になることがあります。そのようなときに漢方薬を併用すると、副作用が軽減されて、抗がん剤の治療を続けられる場合があります。

◎未病を治(ち)す —— 未病とは、病気の一歩手前の状態を指します。漢方では、この状態で治療を受けることで、病気を予防したり、あるいは、持病から合併症を併発しないようにすることを重要視しています。今日の西洋医学における“予防医学”に相当する考えといえるでしょう。現代の日本では、生活習慣病、メタボリックシンドローム、糖尿病の合併症などが当てはまるように思われます。これらにより動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳梗塞など重大な病気が起こるリスクが高まります。このような場合の治療は、食事や運動など生活習慣の改善と、必要があれば西洋薬の服用が基本になりますが、最近では、漢方薬も血管障害の予防に有用性が期待できることがわかってきています。

※1 1つの生薬にもいくつもの成分が含まれている。
※2 甘草湯は、甘草という生薬1種類で構成されている。
※3 薬物が生体に効果を及ぼす仕組みなど。

■『NHKきょうの健康』2014年10月号より

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