健康

トランス脂肪酸って何?


2014.08.29

イラスト:森越ハム

NHKテキスト『きょうの健康』の連載「なるほど! 栄養学」では、女子栄養大学教授で管理栄養士の川端輝江(かわばた・てるえ)さんが、毎月1つのテーマに沿って栄養学の基本を解説しています。8月号で取り上げているのは「トランス脂肪酸」。健さん、康子さん夫婦と一緒にトランス脂肪酸とは何であるのかを学びましょう。

*  *  *

健さん(以下、健) おや、このごろ同じお菓子ばかり食べていないか?

康子さん(以下、康) スーパーマーケットの安売りのときにいっぱい買っちゃったから、食べちゃわないとね。

 脂質も多そうだし、エネルギーのとり過ぎになるだろ。

 でも、これおいしいのよ。それに食事を控えめにするから大丈夫よ。

 お前はいつもおやつの食べ過ぎを、食事を減らして辻褄(つじつま)合わせしようとするな。川端先生、これでいいんですか?

川端先生(以下、川) おやつを食べたいからといって、食事がおろそかになるのは、いけませんね。エネルギーは十分でも栄養素が偏ってしまいます。

 すみません……。

 もう1つ気になったのが、おやつが加工食品に偏っていることです。

 ギクッ……。

 トランス脂肪酸の話を聞いたことがありますか?

 脂肪酸の話は前に聞いたな(2013年11月号)。脂肪酸の性質が、その脂質の特徴を決めるんだっけ。

 トランスってどういう意味かしら。

 トランスとは「向こう側の」という意味です。通常の脂肪酸と比べると、水素の向きが反対の箇所があるのです。

 だからトランス脂肪酸! でも水素の向きが違うとどうなるんですか?

 トランス脂肪酸は酸化や加熱に対して安定していて、サクッとした食感を出したり、常温で固形のため扱いやすいのが特徴です。そのため加工食品やファストフードを中心とした外食産業で広く利用されてきたのです。

 へ~。

 ただし、加工食品に含まれるほとんどのトランス脂肪酸は、自然界にもともと存在する脂肪酸ではありません。

 えっ、どこでできるんですか。

 3つのケースがありますが、主に、植物油からマーガリンやショートニングなどの固形の脂(硬化油/こうかゆ)をつくるときです。バターやラードなどはもともとが固形ですが、植物油などの液状の油に水素を加えて固形にするときに、一部の化学構造がトランス型に変化することがあるのです。

 水素の向きが変わってしまうのね。

 ほかには植物油を加工処理する際、高温で加熱処理をした場合や、牛や羊などの反芻(はんすう)動物の場合、微生物の働きによっても生成されることがあります。

 トランス脂肪酸は体にどういう影響があるんですか?

 トランス脂肪酸は過剰摂取すると、悪玉のLDLコレステロール値を上げて、善玉のHDLコレステロール値を下げる働きがあり、心疾患のリスクを増加させることがわかっています。

 どんな食品に含まれているの?

 例えば、マーガリンやショートニング、市販の菓子パンやパイ、ドーナツ、クッキー、チョコレート菓子、フライドポテトやカレールウなどの加工食品に、トランス脂肪酸が多く含まれているものがあります。

 私の好きなものばかりだわ……。

 ただし、これらの加工食品がすべてトランス脂肪酸を高濃度に含むのではありません。同じ種類の食品でも、メーカーや商品ごとに含有量は異なります。

 じゃあ、どうしたらいいんですか。

 気をつけなければいけないのは、まず脂質そのものの摂取量です。日本人のトランス脂肪酸の摂取量は平均的には問題がないとされています(※1)。しかし脂質の総摂取量が多い人は、トランス脂肪酸の摂取量も多い傾向にあるという報告(※2)があります。

 僕は脂質の摂取量多いかも……。

 また、加工食品に偏った食生活をしている場合も注意が必要です。先にあげた加工食品は嗜好性が強いものが多く、同じものを継続的に大量に食べてしまうケースが少なくありません。

 ちょっと、思い当たります……。

 それを防ぐためにも、脂質のとり過ぎに気をつけること。加工食品、特に同じ銘柄のものばかりを極端にとり過ぎないように注意し、バラエティーに富んだ食材を選択することが予防につながりますね。そうすれば、トランス脂肪酸のことばかりをそれほど気にすることはありません。

 どんなものでも偏って食べちゃいけないってことなんだな。

 勉強になりました!

※1 食品安全委員会 新開発食品評価書「食品に含まれるトランス脂肪酸」P73(2012)
※2 川端輝江ほか「日本栄養・食糧学会誌」(2008)

■『NHKきょうの健康』2014年8月号 連載「なるほど! 栄養学」より

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