健康

不眠症、4つのタイプとそのリスク


2014.01.14

この50年間、日本人の平均睡眠時間は減少し続けている。

 

日本人の睡眠時間は年々短くなる傾向にある。睡眠が不足するとさまざまな病気を引き起こしやすくなるため注意が必要だ。滋賀医科大学 特任教授の角谷 寛(かどたに・ひろし)さんが「不眠症」について詳しく解説する。

 

*  *  *

 

日 本人の睡眠時間の2010年の調査結果を見ると、平日の平均睡眠時間は7時間14分でした。これは1960年と比べると、1時間以上も短くなっています。 必要な睡眠時間は人によって異なるうえ、加齢とともに短くなる傾向がありますが、日本人の睡眠時間は、先進国の中では最も短くなっています(※1)。

 

睡眠と健康

睡眠には、脳を休めて回復させるという働きがあります。また、情報を選別し、記憶として定着させる働きのほか、体の成長や修復に関わる成長ホルモンの分泌にも関係しています。そのため、睡眠が不足すると、さまざまな病気を引き起こしやすくなります。

 

例えば、睡眠が不足すると、食欲と関係するホルモンの分泌が変化したり、インスリンの働きが悪くなったりするため、肥満や糖尿病などの生活習慣病を起こしやすくなります。不眠症があると、将来的にうつ病になるリスクが高くなることも知られています(※2)。

 

また、アルツハイマー病の患者さんの脳内には、老廃物(アミロイドβベータたんぱく)が大量に蓄積していることが知られていますが、睡眠の量が不足したり質が低下したりすると、この老廃物の脳内への蓄積が促進されるとの報告(※3)もあります。

 

さらに睡眠によって、この老廃物の排出が進むことが、別の実験からわかってきました(※4)。

 

不眠症とは

睡 眠の悩みは、3つに大別されます。【1】仕事などが忙しくて十分な睡眠時間がとれない「睡眠不足」、【2】寝る時間や起きる時間がバラバラで、日中に眠気 が残る「リズム障害」、【3】眠れる状況はあっても、よく眠れないという、「不眠症などの睡眠の障害に関係するもの」です。日本人の場合、約10人に1人 の割合で不眠症のある人がいるといわれています。「眠れる状況はあっても眠れない」ことに加えて、「眠気のために、日中の活動に支障がある」といった状態 が通常1か月以上続くと、不眠症と診断されます。

 

不眠症は、次の4つのタイプに分けられます。

 

◎入眠障害——寝床に就いて眠ろうとしても、なかなか寝つけない。
◎中途覚醒——寝ている間に何度も目が覚めてしまう。
◎早朝覚醒——朝、望ましい起床時刻よりも早く起きてしまい、その後眠れない。
◎熟眠障害——十分な睡眠時間を確保していても、熟眠感がない。

これらの症状を複数併せもつ患者さんも見られます。

 

治療―不眠症と診断されたら、まずは睡眠衛生指導から

2013年に作られた「診療ガイドライン(※5)」では、不眠症の治療の際、初めから睡眠薬を使うのではなく、まずは「睡眠衛生指導」を行うことが明記されました。睡眠衛生指導で改善しない場合は、「睡眠薬」を使用し、同時に「認知行動療法」が行われる場合もあります。

 

◆睡眠衛生指導

睡眠衛生指導は、快適な眠りを阻害する状況を減らす治療法で、これまでの生活習慣を見直すことから始めます。

 

具 体的には、「寝室を暗くして、静かにする」「眠る4時間ぐらい前からカフェインを多く含む食品は摂取しない」「眠れないときはいったん寝床から出て、眠く なってから寝床に就く」などがあげられます。「ぬるめの湯に入浴する」「軽めの運動をする」ことも勧められます。体温が下がるときに眠気を感じるため、入 浴や運動で体温を少し上げ、その後体温が下がるタイミングで寝床に就くと、眠りやすくなります。

 

また、眠る前に明るい光を浴びると、睡眠の妨げになります。夕方以降は、テレビの視聴や、携帯電話などディスプレーのついた機器の使用をなるべく避け、使用する場合は、画面の輝度を下げて少し暗くするなどの工夫をするとよいでしょう。

 

◆認知行動療法

睡眠についての誤った考え方や行動パターンを改善することで眠りを改善しようという治療法が「認知行動療法」です。その中でも、「睡眠日誌」をつけて、「睡眠制限法」を行う方法が、高い効果を上げています。

 

睡眠日誌は、よく眠れた時間帯や、うとうとしていた時間帯など、毎日の眠りの状態を記録するものです。さらに、何時から何時まで布団の中にいたかを記します。毎日記録することで、自分の睡眠の様子を客観的に見ることができます。

 

睡 眠制限法は、睡眠日誌をもとに、寝床で眠れずにいる時間やうとうとしている時間を減らし、寝床に就いている時間を制限するものです。睡眠制限法を行うと、 睡眠時間は少なくなりますが、ぐっすり眠れる時間が増え、“寝床で眠れる”という感覚が心と体の両方から身につきます。

 

このような睡眠衛生指導や認知行動療法だけで症状が改善する患者さんも、少なくありません。NHKテキスト『きょうの健康2014年1月号』では、睡眠日誌をもとに行う睡眠制限法や睡眠薬の使い方についても、詳しく解説をしています。

 

※1 OECD Social Indicators, Society at a Glance. 2011
※2 Chang PP, et al. Am J Epidemiol. 1997
※3 Spira AP, et al. JAMA Neurology. 2013
※4 Xie L, et al. Science. 2013
※5 厚生労働科学研究班・日本睡眠学会「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診察ガイドライン」2013年版

 

■『NHKきょうの健康』2014年1月号より

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