教養

アレクサンドル・デュマの父は黒人の血を引く長身の美男子だった


2013.03.04

フランス革命後の19世紀に生まれ、『三銃士』や『モンテ・クリスト伯』などの名作を世に送り出した作家アレクサンドル・デュマが、実は黒人の血をひいていたことをご存じだろうか。「デュマは、幼い頃に死に別れた父(トマ・アレクサンドル)に対する憧れが人一倍強く、『モンテ・クリスト伯』で復讐劇を繰り広げる主人公ダンテスは自分の分身であるとともに、父の姿を投影したものだともいわれています」と話すのは作家の佐藤賢一(さとう・けんいち)さん。デュマの意外な出自と、憧憬の的だった父について解説していただいた。

 

*  *  *

 

トマ・アレクサンドルの父(デュマの祖父)にあたる人物は侯爵の位を持つ貴族でしたが、50歳を迎える頃に領地をすべて売り払い、西インド諸島のフランス植民地サン・ドマング島(現ハイチ)に渡って、農場経営に乗り出しました。その時に、現地の黒人奴隷との間に生まれたのがデュマの父親だったのです。相手の女性は二男二女を産み、子どもたちはすべて奴隷として一度は売り飛ばされましたが、長男であるトマ・アレクサンドルだけは、利発そうだったことから買い戻され、フランスに連れてこられたと伝えられます。

 

若い頃の父の姿を振り返って、デュマは『私の回想録』でこのように書いています。

 


当時、父は24歳だったが、滅多にお目にかかれない美青年だった。褐色の肌、焦げ茶色の潤んだ瞳、まっすぐに通った鼻筋。(中略)歯は真っ白で、唇に笑みをたたえ、がっしりとした肩に首がしっかりと据わっていた。190センチの巨軀に似合わず、手と足はまるで女のようだった。

 

(『アレクサンドル=デュマ』辻昶、稲垣直樹著、清水書院)


 

デュマの父は、ハンサムで長身という容姿に加えて、身体能力にも長けていたらしく、重い軍用銃の銃口に指を1本ずつ入れて4丁の銃を片手で持ち上げた、太い藤の枝を素手でねじ切った——などといった怪力自慢も『私の回想録』には書かれています。

 

■『NHK 100分de名著』2013年2月号より

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