教養

老子思想は階級制度へのアンチテーゼ


2013.05.12

おおまかにいって『老子』には「多くを求めることなく、作為的なことは行わず、他人と争うことなく、あるがままに生きよ」といった趣旨のことが書かれている。こうした謙虚で消極的ともとれる点から、現代で読まれる『老子』は「隠遁の書」「弱者のための処世術」といったイメージでとらえられることが多いようだ。

 

しかし、『老子』は競争社会から落ちこぼれた弱者を癒すためだけに書かれたものではなく、国や領土をいかに治めるかという統治論についても多く書かれている。いわば、統治者に向けて書かれた「権謀術数の書」という側面も持つ。その統治論には、それまでの社会常識を覆すような、反体制的な姿勢が貫かれていることを東京大学名誉教授の蜂屋邦夫さんは指摘する。

 

*  *  *

 

老子が生きていた春秋戦国時代の中国は、まさに領土をめぐって大国がせめぎ合う乱世でした。そんな状況を憂いた知識人たちは、そうしたら戦いを収捨して社会を安定させられるか、さかんに議論をかわすことになります。そうして諸子百家と呼ばれる多数の思想家が現れ、中でも幅をきかせていたのが孔子に始まる儒家でした。

 

儒家思想は、「仁」や「義」「礼」などのモラルを尊重し、血族的な関係や主従関係を重んずることで安定した社会をつくろうという思想です。人間の生き方でいうならば、学びによって自己を向上させ、それを家・国・天下に広めていくことを理想としています。

 

しかし、儒家思想を基本とした社会は、卿(けい)・大夫(たいふ)・士といった厳格な階級制度や士農工商の身分制度、息苦しい封建制システムのうえに成り立っています。こうした儒家思想に反旗を翻し、アンチテーゼとして生まれたのが老子思想でした。

 

■『NHK 100分de名著』2013年5月号より

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