教養

般若心経は釈迦の教えではない?


2013.03.02

巷(ちまた)を見回すと『般若心経』の解説本が山のように出回っている。花園大学教授の佐々木閑(ささき・しずか)氏は、「どれもイラストや図解をふんだんに使ってわかりやすく説明していて感心するのですが、何かしらしっくりこない、肝心なことに触れていないという思いが湧いてきます」と語る。そんな佐々木氏に『般若心経』の成り立ちを聞いた。

 

*  *  *

 

たとえば、「『般若心経』というお経は、誰の教えでしょうか?」と問えば、おそらく多くの方が「それは仏教なのだから、お釈迦様、つまりブッダの教えでしょう」とお答えになると思います。「『般若心経』こそが釈迦の教えのエッセンスである」などという言葉もよく聞きます。

 

しかしそれは違います。

 

『般若心経』の作者は、釈迦の死から五百年以上たって現れた「大乗仏教」という新しい宗教運動を信奉する人たちの中にいます。それがどういう人なのかは全くわかっていません。

 

その大乗仏教という宗教運動には様々な流派があったのですが、そのうちの一派が、釈迦の教えを部分的に受け継ぎながらも、そこに全く別の解釈を加えて「般若経」(はんにゃぎょう)と呼ばれる一連のお経を作りました。何百年もの間に、「般若経」という名のついたたくさんの新しいお経を作ったのです。

 

そして『般若心経』は、そのたくさん作られた「般若経」の一つです。

 

ですから、『般若心経』が述べていることは必ずしも釈迦の考えではありません。それはむしろ、「釈迦の時代の教えを否定することによって、釈迦を超えようとしている経典」なのです。

 

■『NHK 100分de名著 般若心経』2013年1月号より

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