教養

ファッションを愛した与謝野晶子


2018.08.24

今年生誕140年を迎える歌人・与謝野晶子(よさの・あきこ)。「かりん」同人の松村由利子(まつむら・ゆりこ)さんが、晶子のファッション観を語ります。

 

*  *  *

 

服装は、多かれ少なかれ、その人の価値観や生き方を表します。与謝野晶子にとって、ファッションは装う楽しみであると同時に、自己表現のひとつでもありました。

 

第一歌集『みだれ髪』には、服飾に関する言葉がとても多く見られます。「うすもの」「絹袷衣(きぬあはせ)」「羽織」「都染(みやこぞめ)」……美しい衣服が若い女性の心を浮き立たせるのは、いつの時代も変わりません。

 

朝を細き雨に小鼓(こつづみ)おほひゆくだんだら染の袖ながき君

与謝野晶子『みだれ髪』

 

紅梅に金糸のぬひの菊づくし五枚かさねし襟なつかしき

 

一首目の「だんだら染」は、地色と染めた部分の幅が同じ横縞(よこじま)、今でいうボーダー柄です。大胆で若々しい模様として歌集が刊行された当時流行していましたが、江戸時代から何度となく流行を繰り返してきた定番の柄といえるでしょう。二首目は、京都の舞妓(まいこ)さんを題材にした「舞姫」と題する連作のなかの一首で、金糸で刺繍(ししゅう)を施した豪華な半襟を詠んだと思われます。着物の好きな作者のうっとりした表情が伝わってくるようです。

 

そんな晶子が1912年にヨーロッパへ旅した際、洋服も着るようになりました。初めは和服姿が珍しがられるのが嫌だったからですが、だんだん洋服の機能性やデザインに魅せられたようです。夫である寛(ひろし)(鉄幹〈てっかん〉)との共著『巴里より』には、フランスの女性たちが流行をある程度追いながら、それぞれ最も似合う色や形を選んでいる様子に感服したことが書かれています。自分の服を仕立てるときの参考にしようと、よく観察したという事情もありました。色の組み合わせからボタンの付け方まで、どれ一つとして同じ服がないことにも大変感心しています。

 

帰国してからの晶子は洋服を愛用するようになり、つば広の帽子をかぶった洋装の写真がいくつか残されています。また、若い女性に洋装を勧める文章も書きました。「衣服の中に肉体の線を隠して仕舞(しま)ふ日本服」「全人格の美を発露することを主とする仏蘭西風(ふらんすふう)の服装」などの表現は、やや行き過ぎた西洋礼賛という感じもしますが、体が動かしやすく機能的な洋装をすることに新時代の到来を重ねていた面もあったようです。

 

■『NHK短歌』2018年8月号より

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