教養

秋の味覚「秋刀魚」を詠む


2017.11.02

「草樹」会員代表の宇多喜代子(うだ・きよこ)さんが、暮らしに関係の深い季題を取り上げる「くらしの暦」。10月号では、秋の味覚の代表格「秋刀魚(さんま)」を詠んだ句を紹介します。

 

*  *  *

 

鮮魚店ではほとんどが「さんま」「サンマ」と表示して売られていますが、秋刀魚と書かれていたとしてもだれもが「ああ、サンマだ」と理解するでしょう。秋の刀のような形の魚、なのですから。当て字ながら感心させられます。

 

古くから日本人にとって馴染(なじ)みの深い水産資源である秋刀魚は、秋に産卵のために千島(ちしま)列島から南下します。おいしいのは何といっても塩焼き。ジュウジュウと脂がしたたり、ご近所に今晩は秋刀魚だなと知れ渡るというまことに庶民的な魚です。

 

当節はあまり煙の出ない魚焼き器がありますが、かつては七輪の炭火で焼いていました。

 

星降るや秋刀魚の脂燃えたぎる

石橋秀野(いしばし・ひでの)

 

火だるまの秋刀魚を妻が食はせけり

秋元不死男(あきもと・ふじお)

 

どちらも七輪の上で焼かれています。あつあつに柑橘(かんきつ)を絞り、大根おろしでいただくのが一般的です。腸(はらわた)がまた珍味。

 

秋刀魚、鯖(さば)、鰺(あじ)、鰯(いわし)。みな青身の魚です。秋の食卓にこれらが代わる代わる出ていましたが、アレはみな優秀な栄養源だったのです。

 

近年、秋刀魚の漁獲量が減ったとのニュースに、どうぞいつまでも秋刀魚が食べられますようにと祈る心地です。

 

■『NHK俳句』2017年10月号より

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