教養

サン=テグジュペリが感じた「老い」は「友人の死」と「若ハゲ」


2013.03.01

『星の王子さま』の作者サン=テグジュペリは早くに自分の「老い」を意識していたという。彼に老いを意識させた出来事を、北九州市立大学名誉教授の水本弘文さんに聞いた。

 

*  *  *

 

サン=テグジュペリは、数度の重大な飛行機事故で顔にも身体にも傷を抱え、身体を動かすのに不自由を感じていたというのも一つの理由ですし、若くして髪が後退してしまったのもこたえたようです。しかし一番のダメージは、古くからの飛行士仲間が事故で次々にこの世からいなくなったことです。ラテコエール航空会社の郵便機パイロットとして、苦難のなかで助け合いながら仕事をした仲間たちです。

 

「実際、何ものも決して、亡くなった仲間の代わりにはなり得ない。旧友はすぐにはできないのだ。たくさんの共通の思い出、共にくぐってきた多くの苦難の時間、たびたびの仲違(なかたが)いと和解、心のときめき、そうした宝に匹敵するものは、何もない」(『人間の大地』2章)

 

特に、不屈の精神で海に、山に、砂漠にと次々に航空ルートを開いていった同僚であり、フランス航空界の英雄だったジャン・メルモーズが大西洋で消息を絶ったのは、サン=テグジュペリにとってはショックだったようで、彼の死でいわば自分たちの時代が過去になったかのような思いだったようです。後に、

 

「人は関係の結び目にすぎない」(『戦う操縦士』14章)

 

と語るサン=テグジュペリです。仲間の死はいわばその関係の糸が一本、一本と失われ、自分の存在が希薄にもなっていくような感じだったのでしょう。生きていくことは太い細いの違いはあれ人々や事物との間に見えない多くの関係を築いていくことであり、自らの存在や行動の意義も他との結びつきのなかで自覚されるのですから。

 

■『NHKテレビテキスト 100分de名著 サン=テグジュペリ 星の王子さま』2012年12月号より

 

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