教養

『菜根譚』に学ぶ「人づきあいでやってはいけない3つのこと」


2014.12.02

和刻本『菜根譚』前集冒頭(大空社蔵)

16世紀から17世紀頃の中国・明代に書かれた『菜根譚』は、処世訓の最高傑作として知られている。人づきあいについても、時代を超えた普遍的なアドバイスが数多く書かれており、大阪大学大学院教授の湯浅邦弘(ゆあさ・くにひろ)氏は「これから人生を切り開こうという若者たちにぜひ読んでいただきたい」と薦めている。人とのかかわり方で、心に留めておきたい『菜根譚』の言葉を湯浅氏が紹介する。

 

*  *  *

 

人の過誤(かご)は宜(よろ)しく恕(ゆる)すべし。而(しか)れども己(おのれ)に在(あ)りては則(すなわ)ち恕すべからず。己の困辱(こんじょく)は当(まさ)に忍(しの)ぶべし。而れども人に在りては則ち忍ぶべからず。(前集一六五)

 

(人の過ちは許すのがよい。だが自分の過ちは許してはならない。自分のつらさは堪え忍ぶのがよい。だが、他人のつらさは見過ごしてはならない。)

 

自戒をこめて言うのですが、この逆のケースがいかに多いことか。自分のことは「まあいいか」といって許すのですが、他人のことは目について非難してしまいます。しかし『菜根譚』は、他人の過ちは許しましょう、他人が辛い思いをしていたら見過ごしてはいけない、救ってあげましょうと言っています。

 

次は、人とつきあう際に、やってはいけない三つのポイントについてです。

 

の小過(しょうか)を責(せ)めず、人の陰私(いんし)を発(あば)かず、人の旧悪(きゅうあく)を念(おも)わず。三者は以(もっ)て徳を養(やしな)うべく、亦(ま)た以て害を遠ざくべし。(前集一〇五)

 

(人の小さな過失を責めたてず、人のプライバシーをあばかず、人の過去の悪事をいつまでも覚えていない。この三つのことを守れば、自分の道徳心を養い、また、危害を遠ざけることができる。)

 

人にはそれぞれ隠しておきたいこともあるのです。人間であれば失敗もします。ですから他人のどうでもいいような過去を責めたてるようなことはせず、プライバシーを尊重し、もう時効だと思われるような過去を執念深く覚えているようなことはしない。こうした心がけを守っていれば、相手のためになるだけでなく、自分の道徳心も養うことができ、人から仕返しを受けることもないのです。他人の旧悪をなじって、「こんなひどい目に遭わされた」ととうとうと語る人もいますが、そういう人は自分自身の徳を下げてしまっているとも言えます。まことに気をつけたいものです。

 

■『NHK100分de名著 洪自誠 菜根譚』より

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