教養

清少納言が認める「カッコいい男」とは?


2014.10.28

自らの実体験に加え、鋭い観察眼と洞察力をもって男女の関係を分析していた清少納言。『枕草子』には彼女が考える「カッコいい男」がしっかりと記されている。日本語学者で埼玉大学名誉教授の山口仲美(やまぐち・なかみ)氏が紹介する。

 

*  *  *

 

清少納言が認めるカッコいい男とは、どんな男だったのか? イケメン、逢瀬の余韻を楽しむ余裕のある男、機転の利く男です。

 

まず、清少納言は「男はイケメンでなくっちゃ」と宣言しています。「説教(せっきょう)の講師(こうじ)は」(三一段)です。

 

説経(せっきょう)の講師(こうじ)は、顔(かお)よき。講師(こうじ)の顔(かお)をつとまもらへたるこそ、その説(と)くことのたふとさもおぼゆれ。

 

「説教してくれるお坊さんは、やっぱり顔がよくなくっちゃ。美男のお坊さんの顔をじっと見つめていてこそ、説教のありがたみもあるというものよ」と大胆に言い切っているところが、何とも新鮮。普通の人は、たとえそう思っていたとしても、口に出してはなかなか言えない。このあと、こんなことも言っています。

 

「顔がよくないと、ついよそ見をしてしまう。そうすると、説経の内容なんかたちまち忘れちゃうから、顔のわるいお坊さんの話を聞くのは、不信心の罪を犯すことになるのでは、と心配になるわ」と。まあ、都合のいい理論ですが、清少納言はふと我に返ってこう付け足します。

 

「でも、もうこの話はやめるわ。だってまだ若い時だったら、こんなふうに罰当(ばちあ)たりなことを書いてもいいけど、私の年じゃあ、来世の罪が恐ろしいもの!」ですって。ふふふと笑ってしまうようなユーモラスな結びです。

 

この章段を取り上げて、清少納言は信仰心がない、不謹慎だと非難する向きもありますが、だからこそ『枕草子』は古典として生き残った、と私は考えています。当時の型にはまった、仏様のことなら何でもありがたいという感性では、現代にまで通じる普遍性は獲得できなかったでしょう。いかに尊い内容であろうとも、話してくれている人の顔や姿につい目が行く。それが、変わらぬ人間の心理です。

 

■『NHK100分de名著 清少納言 枕草子』2014年10月号より

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