教養

3分で読める「般若心経」はもともとお経じゃなかった?


2014.10.01

大乗仏教の中で生まれた『般若心経』とは、「般若経」と呼ばれる一連の経典をわずか262文字に絞った簡易版(ダイジェスト本)。4、5世紀ごろに成立したと言われている。当初、お経ではなかった可能性もあると花園大学教授の佐々木 閑(ささき・しずか)氏は指摘する。

*  *  *

『般若心経』は、数ある「般若経」の中でも際だって短いものですが、面白いことに玄奘三蔵は、反対に「般若経」の中で際だって長いものも翻訳しています。それは『大般若波羅蜜多経(だいはんにゃはらみったきょう)』というもので、その長さは『般若心経』の実に1万3000倍もあります。声に出して読むだけで何日も、ひょっとしたら何ヶ月もかかってしまうくらいの分量です。3分で読める『般若心経』も、読むのに何日もかかる『大般若波羅蜜多経』も、そのどちらも「般若経」なのですから、「般若経」というジャンルの多様性がよくわかります。そして『般若心経』がいかにコンパクトなお経であるかもおわかりいただけると思います。

この短さから推測するに、『般若心経』はもともとは「お経」ではなかった可能性もあります。じっさい原典のサンスクリット版のタイトルは『プラジュニャーパーラミター・フリダヤ』といい、「フリダヤ」は「心臓(もっとも大事なもの)」という意味ですから、訳すとしたら『般若波羅蜜多心』です。最後に「経」という語はついていません。作者にとっては、これは「お経」ではなく、「般若経」のエッセンスだけを取り出した、不思議の呪文だったのでしょう。

■『NHK 100分de名著 般若心経』2014年9月号より

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