教養

ペットとの心の交流を短歌に詠む


2014.09.14

ペットは直接可愛がって飼育する身近な動物です。相棒のような、家族同様の存在。言葉を持たない動物に慰藉(いしゃ)を受けたりします。人間とペットの関係、心の交流を詠った短歌を、「かりん」編集委員の梅内美華子(うめない・みかこ)さんが紹介します。

 

*  *  *

 

玄関にいつも見送りくるる犬帰ってこんでいいと鳴くなり

石田比呂志『忘八』

 

飼い主が出かけるとき、玄関までついて来る犬を、いつも見送ってくれる、と擬人的に描いています。「帰ってこんでいい」と言っているようだ、という下の句にユーモアがあります。犬は本当はそんなふうには思っていないでしょう。飼い主のほうがわざと逆の言葉にしているのです。帰りが遅くなったり、ある時は酔っ払って帰ってくるのかもしれません。そのような自分の後ろめたさを含んでひねくれた言い方にしているのです。「帰ってこんでいい」の方言にも年齢を重ねた作者がにじんで、味わいを出しています。見送る犬が可愛いことをそのまま述べるのではなく、ひねっているところに、長年飼ってきた交流の深さや慈しみがうかがわれます。

 

作者は昭和5(1930)年の生まれです。

 

かゆいとこありまひぇんか、といひながら猫の頭を撫でてをりたり

小池 光『時のめぐりに』

 

床屋や美容室でシャンプーをしてもらうときに「かゆいところはございませんか」などと言われます。そのセリフを飼い猫に、「かゆいとこありまひぇんか」と少し崩しているのがおもしろいですね。そのセリフにまずインパクトがあります。作者自身はそういう職業ではないので、他者にそれを言う機会はないのですが、飼い猫になら言えるのです。飼い主と猫だけの、のんびりとくつろいだ時間と関係が浮かんできます。

 

■『NHK短歌』2014年9月号より

 

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