教養

「旧約聖書」の内容と位置づけ


2014.05.19

ノアの洪水物語〔創世記6〜8章〕(ドレ画)

聖書には「ユダヤ教の聖書」と「キリスト教の聖書」の二種類があり、ユダヤ教の聖書がいわゆる「旧約聖書」と言われているものにあたる。千葉大学文学部教授の加藤隆(かとう・たかし)氏が旧約聖書の位置づけについて解説する。

 

*  *  *

 

「聖書」というと、「キリスト教の聖書」のことであるのが普通です。しかしまず存在していたのは、「ユダヤ教の聖書」です。ユダヤ教からキリスト教が派生して、「キリスト教の聖書」が生じました。「キリスト教の聖書」は、「ユダヤ教の聖書」に、キリスト教独自の文書集を加えたものです。「キリスト教の聖書」の中の「ユダヤ教の聖書」は、従来からあったものを引き継いだものなので、「旧(ふる)いもの」だということで、「旧約聖書」ということになりました。「キリスト教独自の文書集」は、キリスト教が成立して展開するうちに生じたもので、「新しいもの」だということで、「新約聖書」という名称になりました。

 

ユダヤ教は、「新約聖書」を権威あるものとして認めていません。したがって「旧約聖書」の部分を「旧……」と言う理由はありません。ユダヤ教では、キリスト教でいう「旧約聖書」の部分が、単に「聖書」です。

 

ところで、「旧約聖書」はどのような内容になっているかを簡単に述べろと言われると、きわめて困る、ということになります。

 

ユダヤ教における「聖書」の編纂は、前5~前4世紀から後1世紀末にかけて行われ、500年ほどの時間がかかっています。内部のテキストの成立時期は、古いものは、少なくとも前10世紀あたりまでさかのぼります。つまり、千年以上の間のさまざまな事情において成立したさまざまなテキストが含まれている、ということになります。書かれたテキストになる以前の「伝承」の状態だった場合もあることを考慮すると、内容の成立についてもっと古い時期も考えねばなりません。

 

聖書は、一気に書かれた長編小説や大論文のような一貫性のある書物ではありません。さまざまな時代の関心から、多岐にわたるテーマが扱われ、記述のあり方も多様で、全体としてきわめて複雑なものになっています。

 

それでも敢えて述べるならば、古代のユダヤ民族の歴史が語られている、と言うことができます。

 

■『NHK100分de名著』2014年5月号より

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