教養

科学でどこまでわかるのか。“超常現象”、NHKスペシャル取材班の挑戦(上)


2014.05.04

3月22日(土)に放送され、「NHKが超常現象を取り上げた!」と大きな注目を集めた、「超常現象 科学者たちの挑戦(NHKスペシャル)」。5月4日(日)にも、「サイエンスZERO」(Eテレ 午後11:30~)で、超常現象を扱う番組が放送されます。NHKスペシャルの再放送もありましたし、NHKが特集する「超常現象」に関心を持たれてる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、番組の出版化を記念して、NHKスペシャル「超常現象」プロジェクトの制作統括を務めた、大里智之さんと、大里さんと旧知の仲であり、超常現象に興味があるという作家の恩田陸さんによる対談を行いました。番組の内容から、古代文明まで多岐に渡ったお話を2回に分けてご紹介します。

 

「NHKスペシャル 超常現象」、番組と書籍のポイントは?

大里 「超常現象」という、ある意味突拍子もないものを扱っているわけですが、大きなテーマの1つに“オカルト排除”というコンセプトがあります。例えば、この番組や書籍の中で取り上げた「生まれ変わり」。この現象を研究している科学者たちも、“昔の人の魂が子どもに乗り移る”とか、“前世が存在する”というような、文字どおりの「生まれ変わり」があると信じて研究しているわけではありません。番組で取り上げたのは、「まるで生まれ変わりかのように見える現象(子どもたちが不思議な記憶を語る)」があるという事実そのものです。
恩田 なるほど。確かに、「偽りの記憶のメカニズムで説明できる」と紹介されていましたね。
大里 そうです。中には、偽りの記憶では説明が難しい事例があることも分かってきましたが、それにしても、科学者たちは、脳科学や遺伝子学、「意識の科学」などを駆使して、合理的に説明できないかと模索しています。つまり、科学者たちは、「生まれ変わり」現象を、いずれは科学的に説明がつく物理現象や自然現象と捉えているんです。その意味で、全くオカルト的なものではありません。ここが重要なポイントですね。例えば、人生に悩む人に「あなたの前世に問題がある」と言って不安につけ込み、高額なものを色々と売りつける霊感商法などがあると聞きます。
恩田 「この玉を買えば、あなたの先祖の魂も浄化されますよ」(笑)。
大里 あるいは、今の人生に絶望し、来世での「生まれ変わり」を信じて自殺する人々もいるとか……。
しかし、先ほども言ったように、いわゆる「生まれ変わり」現象は、魂や前世とは無縁の物理現象である可能性が高いのだから、「高額な玉を買っても解決にはならないし、自殺をしても生まれ変われる訳ではない」という風に考えることが大切だと思います。超常現象を、物理現象と捉えて解明に挑む科学者達の姿を通して、そんなことを、番組や書籍から感じていただければありがたいと思っています。
恩田 オカルトの危険性ということであれば、「生まれ変わり」だけではないですよね? 超能力はどうでしょうか。
大里 例えば、「テレパシー」。一般的には、離れた人同士の思いや考えが通じあうということを想像しますが、そうした事実は、確認されていません。番組や書籍で紹介したのは、離れた2人の脳が同期するかのような不思議な現象が報告されているという事実です。この実験を行った科学者たちも、これが即、「テレパシーだ」などとは思っていない。まだまだサンプル数も少なすぎるし、条件設定も変えて実験しなければ、結論は出せないと考えています。
恩田 確かに、科学者たちは「超常現象の存在を立証する」というスタンスでは研究していないですよね。
大里 ええ。当然ながら「人の考えを読む」というような、神がかった力を発揮する超能力者は、存在が確認されていませんし、研究する科学者たちも、そんな人が存在するとは信じていない人が大多数。ここも大前提として重要なところです。
神がかった力を持つという教祖を信じて、多くの若者がオカルトに走った不幸な歴史もあります。声を大にして言いたいところなのですが、そんな超能力者は、たぶんいない。
怪しげな新興宗教にはまり込んでしまう前に、番組に登場する科学者たちの取り組みを通して、もう一度落ち着いて考え直すきっかけとなってくれたら、番組制作者としてこれ以上うれしいことはありません。
恩田 この番組のアイデアを最初に私が聞いたのは、2007年ごろだったでしょうか。「ぜひぜひやってください」と楽しみにしていました。私自身は霊も見たことありませんし、不思議な体験自体もしたことがないんです。でも、「見ない」のだけれど、「あるんじゃないか」とも思っていて。これだけ、たくさんな人が目撃談や体験談を話している。信用できる人が話していたり、周りでも聞くしね。だから「あるんじゃないか」と。さらに、科学的に説明がつくということになれば、楽しみですよね。子どものころから、矢追さんの番組を見ていた世代的には、どうしても色眼鏡で見てしまう部分もありますけどね。
大里 私たちがこの番組で伝えたかったのは、不可思議なものに対して、合理的な答えを求めて、科学で挑んでいくことの大切さです。
もちろん、先ほども言ったように、オカルト的な超常現象はないと断言できると思うんですが、それを除いても、現代科学で説明できないことは、この世の中にまだまだあると思うんです。なぜなら、科学は進歩の途上にある訳ですから。未来の人々には理解できても、我々には説明不可能な現象があってもおかしくない。1000年先の人類が、今よりどれくらい進んでいるのか。たぶん想像を絶するほどに進歩しているのではないかと思います。だから、今の時代に、分からないことがあるなんて、ある意味当たり前のこと。
でも、NHKが、この手の話題を取り上げると、どうしても「科学で説明し尽くそう」という方向に行くと思うんですね。もちろん、オカルトをあおり立てる番組よりは、そっちの方が全然いいと思いますがね。でも、そんなに無理して説明しなくても、分からないものは分からないと提示した方が素直じゃないのかという気がしたんですね。
恩田 分からないなら分からないで無理することないのにね(笑)。でも確かに、これまでは、「嘘だ、インチキだ」というのと、「みんなでUFOを呼びましょう」の2つのタイプの番組が多かったです。そういう意味では今回の番組は新鮮でした。

 

――NHKスペシャルの基となっている、ザ・プレミアム「超常現象」(BSプレミアム、全2回、1月放送)では、「心霊現象」と「超能力」の二つのカテゴリーに、超常現象を分類しています。その理由を教えてください。

 

大里 これには理由があります。「超心理学」※という学問の分野があるのですが、そこでは、「超常現象」の研究テーマが、大きく2つに分かれていると聞いたからです。1つは、“死後生存”の問題、いわゆる「心霊現象」ですね。そしてもう1つは、「超能力」です。 「心霊現象」には幽霊、臨死体験、生まれ変わりなどが含まれます。「超能力」は念力、透視、テレパシーなどですね。UFOとかは別です。あれも「超常現象」と言えると思いますが、ちょっと話は別ですね。今回の番組では、あくまで、「人間」にかかわることを扱うようにしました。だから突き詰めていくと、「人間の本質とはなんぞや」というテーマに行き着くんです。

※超心理学――既知の自然法則では説明できない現象、いわゆる超能力や超常現象の存在の有無や、その仕組みを研究する学問

 

「記憶」や「思念」は物質か?

――恩田さんは、「生まれ変わり」についてはどうですか?

恩田 「あるんじゃないか」としか言えない(笑)。でも、私も好きでたくさん本を読みましたけど、いろいろな例があって、「どう考えてもそれは説明できないだろう」という場合もあるんですよね。
大里 世界的な天文学者で、「超常現象」の懐疑主義者として有名なカール・セーガンも、まじめに調べてみる価値があると思うものとして、「意識が乱数発生器に影響を及ぼすこと」、「自分に向けられた思考やイメージを受け取ることができること(≒テレパシー)」、「生まれ変わりかのような現象があること」の3つを挙げています。これらの現象については、バリバリの懐疑派である彼が、「真実の可能性がある」と言っています。 おそらく、「生まれ変わり」という言葉がよくないのでしょう。人が「生まれ変わる」なんてことは、きっとない。「意識」や「記憶」といったものが、なんらかのメカニズムで継承されることがあると理解したほうがいいということかもしれない。量子力学で説明しようとしている人もいるし、「遺伝子が記憶を継承する」なんてことを言う人もいます。いずれにしても、実際に前世があったわけじゃないと。
恩田 そうそう、「遺伝子の記憶」というのはある気がする。「芋洗い猿」※のエピソードじゃないけど。臓器移植で記憶が引き継がれるというネタの小説もありますしね。本当にあるって言いますよね。

※「芋洗い猿」のエピソード――猿の一頭がイモを洗って食べるようになり、同行動を取る猿の数が例えば100匹を超えたときその行動が群れ全体に広がり、さらに場所を隔てた猿の群れでも突然この行動が見られるようになったという。実際には確認されてない。

大里 脳だけでなく、体も覚えているんですかねぇ。
恩田 清水玲子さんという方の漫画で、『秘密』という作品があるんです。そのなかで、人間が死ぬ直前に、脳の中から記憶を取り出すという話があります。それを科学捜査に使うのだけれど、これも実現可能なんじゃないかと思っちゃいますよね。そう考えていくと、「記憶」は物質なのかも、と。そうすると、「生まれ変わり」が説明つきますけどね。でも分からないなあ。本当に「意識」や「記憶」は難しい。
大里 分からないですよねえ(笑)。不思議だなと思いますね。でも、例えば、デジャブや虫の知らせなら、多くの人が体験することでもありますしね。
恩田 今(2014年3月現在)、六本木にある国立新美術館で、「イメージの力―国立民族学博物館コレクションにさぐる」という企画展をやっているんです。原始キリスト教の祭壇とか、呪術に使われていた人形なども展示されていたのですが、ものすごく怖いんですよ。全身に釘を刺した人形とか。
大里 怖い!
恩田 入り口のところに、仮面がずらっと並んでいるんですが、それがいちばん怖かったなあ。出てくるときに、「何か憑いてくるんじゃないか」と思って、肩を手で払っちゃった(笑)。ああいうのを見ていると、「思念」というものは残るんじゃないかという気はしますよね。付喪神(つくもがみ)状態。本当に使っていた人たちの道具や人形ですから。大丈夫かなって思っちゃいました。

※付喪神――道具や生き物や自然などの依り代に、神や霊魂などが宿ったとされるものの総称。

大里 確かにお守りとか捨てられないですよね。人形とか。そういう感覚はありますよね。
恩田 だから、サイコメトラーとか信じちゃうんだろうなあ。
大里 でも、それをあえて、「そういうことはない!」と言うのが大切だと思いますね。
恩田 夢も不思議ですよね。私が書いた、『夢違』という小説があるんです。夢を映像化して見られるようになっている世界が物語の舞台になっています。夢を心理分析に使ってカウンセリングするというお話なのですが、ちょうど小説を書き終わったときに、在米の日本人科学者が、おぼろげではあるけれど脳活動の映像化に成功したというニュースが届いたんです。あれには驚きましたね。
大里 ありましたね~。
恩田 いずれは、夢の映像化も成功するんじゃないかなと。「夢」って、本当にその人固有の体験のはずなのに視覚化できるかも、というところが面白いと感じました。でも「見えてしまう」のは恐ろしいことでもありますよね。見えてしまうと「事実」になってしまいますから。本だったら、場面や登場人物を、読者が個々に想像しますよね。でもそれが映画になると、みんなのイメージが固定化される。
夢って人それぞれじゃないですか。「夢を見ない」という人もいれば、モノクロだという人もいるし。でも、カラーで鮮明な夢を皆で見たら、みんな「そういうものとして、夢を見る」のではないかなと。

 

乱数発生器とももクロ?!

――恩田さんが今回の番組・書籍でいちばん印象に残ったところは?
00816322014_p000_03
■写真:火を放たれた巨人像「ザ・マン」(番組より)
恩田 バーニングマン※のところですね。

※バーニングマン――アメリカ北西部のネバダ州の砂漠で行われるイベント。参加者は、何もない平原に街を作り上げ、新たに出会った隣人たちと共同生活を営む。イベントのクライマックスでは、街の象徴として、敷地中央に建てられた、巨人像「ザ・マン」に火を放たれ、焼却される。

大里 「ザ・マン」が燃えて、乱数発生器※の数値に偏りが発生したと報告されている、あの部分ですね。

※乱数発生器――乱数とは無作為にならんだ数字列のこと。乱数発生器は、0と1が並ぶ乱数を1秒間に数百というスピードで、自動的に作り出す機械。今回の番組や書籍では、人間が意識を強く集中する場所では、この乱数発生器が発生させる数値にごくわずかだか偏りが感じられるとする科学者の研究を取材。

恩田 こないだ、実は国立競技場の、ももクロ(ももいろクローバーZ)ライブに行ってきたんです。これは乱数発生器を置いたほうがいいなと思いました(笑)。ファンの皆さんの「そろい方」がすごかった! フリもそうだし、コール&レスポンスもまったく乱れないんです。国立競技場で、「これ、針振り切れてる!」って思いましたね(笑)。「意識は物質としてあるんだろうな」と感じさせるのに十分なパワー(笑)。
乱数発生器で言えば、アメリカ同時多発テロのときに、大きな反応があったというエピソードも不思議ですよね。東日本大震災のときも偏りがあったとか。その話がいちばん面白かったかな。他には、本に出ていた、「予知」の実験で「怖い写真を見る“前”に、体温が低下した」という話も興味深かったですね。
大里 私が10年くらい前に、明治大学の石川幹人さん※に会いに行ったときに聞いたのが、その話なんです。「予知」と言うより「予感」と言った方がいいかもしれません。その予感実験の話を石川さんがしてくれて、「原因はまだ分からないのだけれども、実験の結果としては捉えられている」とおっしゃっていたのです。そのとき、「へぇ~!」と思って。そのことが、私の背中を押してくれ、番組を諦めずにできた理由の1つなんです。「予感実験」の話はいろいろな科学者がいろいろな形で実験・追試していて、かなりのケースが確認されているとのことでした。もちろん否定的な見解を持つ科学者が大多数ですけど。でも、そういう現象が本当に捉えられているなら、もっと多くの科学者が検証に乗り出したらおもしろいと思うんです。その結果、合理的な説明ができるかもしれないし、完全に否定されるかもしれない。どちらに転んでも、それが、科学的な成果だと思うんですね。
「予感」を研究している研究者の中には、これは、何も特別なものではなくて、多くの人に備わっている潜在能力ではないかと考えている人もいるようです。
例えばですが、いまの自然界にも、不思議な現象は、たくさんありますよね。無数の鳥の群れがお互いぶつかることなく飛んでいくこととか、サケが生まれた川に戻ってくることとか。どれも仮説はあるけど、よく分かっていない。言えるのは、どうも、動物は未知の能力を兼ね備えているということです。そうだとすれば、同じ動物である人間が、そうした未知の能力をもともと兼ね備えているという考えも、あながち荒唐無稽だとは言い切れない気もするんですね。分かりませんけどね(笑)。一方で、ノストラダムスのような「予言」はないと断言できると思いますが。

※石川幹人――心理学者。明治大学教授。著書に『超心理学 封印された超常現象の科学』などがある。今回の番組にもかかわる。

 

「超常現象」と心理的要因

恩田 CIAがユリ・ゲラーの「透視能力」を評価していたという話は面白いですよね。
大里 ユリ・ゲラーもまだ元気なんだから、本当に超能力を持っているというのなら、もっと科学の実証実験に付き合ってくれればいいのになあと思うんですけどね。さんざんやって自分はもういいという感じでしょうか。彼自身については正直分からないなあ。ただ、面白いと思ったのは、この本でも紹介していますが、ユリ・ゲラーのやっていることはすべてマジックで再現できるという事実ですね。
00816322014_p000_04
■写真:ユリ・ゲラー(番組より)
恩田 「なんでスプーンなの?」ってのは、いつも思いますけど(笑)。ほかのものも曲げてよ(笑)。
大里 今回の取材では、こちらが用意したスプーンではない、自前のスプーンをまず曲げて見せてくれました。なんとも言えないですよね。
恩田 話は変わるけど、『人類はなぜUFOと遭遇するのか』という本を知っていますか。すごく面白い本なんですけど、やはりUFOの出現する数というのは、その時代の社会不安とリンクしているらしいんです。冷戦が始まったりとか、ベトナム戦争が泥沼化したりとか、社会状況が深刻になると、UFOの目撃件数が増えるようです。
大里 心理的要因というのは大きいでしょうね。
恩田 そして陰謀論が根強い(笑)。「アメリカ政府はUFOや宇宙人と接触しているが、それを隠している」とか。70年代のヒッピー全盛のころは、「宇宙人は愛を運んでくるんだ」という言説も多かったようなんですが、90年代になると、「これは陰謀で、宇宙人は地球を破壊しにきたんだ」と変わったそうですよ。
社会的無意識というものが、日本も同じですけど、アメリカにも色濃く存在しているんでしょうね。

 

――書籍の第一部で物理学者のスティーブさんが、「人はなぜ幽霊を見るのか」という趣旨の発言をしていました。やはり心理的な要因は大きいんでしょうか。

 

大里 大きいでしょうね。
恩田 「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」。なんとうまい川柳なんでしょう(笑)。人は見たいものを見る!
大里 個人的には、幽霊はいないんだろうなあと思いますけどね。幽霊はこれだけ研究されていても、科学的に捉えられていないんですよ。だから、人間の脳が生み出しているものと言っても過言ではないのかなあと思います。
恩田 暗くて不気味なところにしか出ないというのは……。昼間、渋谷のスクランブル交差点には、幽霊出なそうですもんね。実は混ざっているのかもしれないけど(笑)。
大里 面白いのは、この番組を作ってから、夜、例えばお墓のような不気味なところに行ってもあまり怖くなくなったんです。「何があっても、今起きたことは科学で解明できるんだ。ただの現象なんだ」と思えば、変な怖さを感じることはなくなりました(笑)。

身近にある、「不可思議な現象」

恩田 私自身は残念だけど、「超常現象」に遭遇したことはない。そういう話は聞くのは好きですけど。個人的に気になるのは、「視線」ですね。絶対に分かるじゃないですか、自分を誰かが見ていると。あれはどうしてなんだろう。
大里 何か研究があるかもしれませんね。
恩田 遠くに見ている人がいても、分かりますよね。「誰か説明して!」っていつも思うんです。ギリシャ時代には、「恋」という現象を説明するというとき、目から何か物質が出ていて、相手の目に入って内臓を刺激するからだと考えられていたらしいんですよ。
大里 なるほどね。
恩田 「目から何か出ている」というのは、意外と芯を突いているかもしれない。
大里 そう考えていくと、いろいろ不思議なことってまだありますね。人を好きになる感情とかね。
恩田 なんでドキドキするかとか。書籍で取り上げられていた、「電話のテレパシー」も実際ありますよね。「ちょうど今電話をかけよう」と思っていたら、相手からかかってくるとか。メール打っているときに、相手からメールが来たりしますもん。
大里 でも、統計学者の人が言うのは、そうではないことのほうが多いのに、それを忘れているだけなんだということですよね。「たまたま一致したことを覚えているから」だと(笑)。
恩田 確かに(笑)。統計ということで言えば、ビッグデータも興味深いですよね。1つ1つは些細な事例であっても、ものすごく数を集めれば、AとB、2つの事象に実は因果関係があることが分かる、とか。ビッグデータのアプローチでも、超常現象についても何か分かるかもしれないんですね。昔と違って、今は母集団をたくさん集められるから。同じ実験をするにしても、膨大なサンプルがあれば、まったく違う仮説が出てくるかもしれないし。
最近、人工知能について調べていて、自動翻訳機について面白い話を見つけたんです。人工知能で翻訳するものよりも、データを検索するタイプの翻訳機のほうがより正確に訳すことができるそうなんですよ。「こういう字が出てきたら、こういう意味」だとか、「この並べ方だと、こういう意味」だとか、内容に応じて人工知能が翻訳するよりも、データから意味を類推する翻訳機のほうが正確だということを知って、少しショックを受けました。考えて翻訳するんではなく、膨大なサンプル数を集めてデータを検索するコンピュータのほうが強いんです。統計やビッグデータにあたることで、分かる真実もあるはず。「超常現象」についても、体験したという人たちには、彼らにしかない共通項があるかもしれませんよ。

 

(この対談は2014年3月22日、NHK出版WEBマガジンのために行われたものです)

※後編は5月5日(月)に掲載します。

 

大里智之(おおさと・ともゆき)
1986年NHK入局。NHKスペシャル「四大文明」「ローマ帝国」「失われた文明 インカ・マヤ」「エジプト発掘」「知られざる大英博物館」などの大型シリーズを制作。現在、NHK名古屋放送局制作部長。

恩田陸(おんだ・りく)
1992年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞を、06年『ユージニア』で日本推理作家協会賞を、07年『中庭の出来事』で山本周五郎賞をそれぞれ受賞した。ホラー、SF、ミステリーなど、さまざまなタイプの小説で才能を発揮している。

このエントリーをはてなブックマークに追加

  • テキストビュー300×56

000000817152017_01_136

NHK「100分de名著」ブックス 良寛詩歌集

2017年04月25日発売

定価 1080円 (本体1000円)

000064072242017_01_136

別冊NHK100分de名著 菜根譚×呻吟語

2017年05月25日発売

定価 972円 (本体900円)

000000113452016_01_136

NHK日本語発音アクセント新辞典

2016年05月26日発売

定価 5400円 (本体5000円)