たまねぎを炒めるとなぜ甘くなるの?


カレーやハンバーグのレシピに登場する「たまねぎ炒め」。よく「あめ色」になるまで炒めるっていうけど、あめ色に炒めるとどうなるの? どうやって炒めるの? そもそもあめ色ってどんな色? 改めて考えるとわからないことばかり。そこで、「たまねぎ炒めの真実」を専門家にうかがいました。
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「もともとたまねぎには、甘み成分の糖類が含まれていて、その量は100g当たり7〜8g。これは野菜の中では断トツで、いちごと同程度です。生のままでは辛いたまねぎですが、炒めることで、甘みが強く感じられるようになります」
と語ってくれたのは人間総合科学大学准教授・玉木雅子(たまき・まさこ)さん。玉木さんの主たる研究テーマは「たまねぎの貯蔵や調理加工における成分変化」。たまねぎを長時間炒めたときの味や香り、糖質がどう変化するかに詳しい。玉木さんに話を聞くと、生のたまねぎを食べても甘く感じないのは、生のたまねぎに含まれる辛み成分を強く感じてしまうから。火を加えると、水分とともにこの辛み成分が揮発したり、分解されたりして、その分、甘み成分を感じやすくなるということらしい。
「また加熱してかき混ぜることで、たまねぎの細胞がくずれ、甘み成分が外に出て、舌に触れやすくなるということもあります」
なるほど〜。また、炒めるとたまねぎ自体の糖度が上がるという意見もあるけれど、そこには誤解があるという。
「水分が蒸発した分、見かけ上の糖度は上がりますが、新しい甘み成分がつくられるわけではありません。以前、たまねぎを炒めると辛み成分が甘み成分に変わる、という論文が出たことがありました。後に、それは誤りだとわかったんです。でも、いまだにそれが正しいこととして語られることがありますね」
たまねぎを炒めても、もともとの糖度は変わらない。でも、生のときに感じられた辛み成分がなくなり、残った甘み成分が強く感じられるようになるということですね。
■『NHKきょうの料理 ビギナーズ』2013年9月号より